From:桜井啓太
横浜鶴見のスタバより
稀勢の里が、引退を決断したようですね。
久しぶりの日本人横綱ということで、期待している人も多かったと思います。それだけに僕も残念です。横綱として優勝できたのは1回だけでした。
2017年の最初の2場所を優勝してからは、休場せず十五番やりきったのは2場所だけ。
30歳になってからの横綱昇進だったので、とても遅いキャリアアップでした。白鵬が21歳で横綱になったのと比べると、ぜんぜん違いますね。それだけにいつまで全盛期なのか僕は心配でした。
その時が思ったよりはるかに早く来てしまった、という感じです。
批判されつづけた2年
横綱という立場であるだけに、休場を繰り返し、出場しても負けてしまう姿には批判もたくさんありました。
確かに、横綱という肩書で相撲をとっている以上、それは仕方のないことです。大関以下と違って、横綱には「降格」がありません。
もともと大相撲では大関が最高位でしたが、「神の依代(よりしろ)」という特別な地位を与えられ創設されたのが横綱です。プロスポーツでは他に類を見ない、特別な存在です。
だからこそ、そんな横綱が負け続けるのは許されない。これは稀勢の里にとってものすごいプレッシャーだったと思います。
辞めるに辞められない
引退すべきという意見は結構前からありました。しかしそれを受け入れることは、稀勢の里じゃなくてもなかなかできないものです。
なにしろ、大きかった期待にまだ応えられていなかったからです。
さらに横綱に昇進し、いよいよこれからというところで、稀勢の里自身も「これからもっと活躍していこう」と考えていたと思います。
不運にもそのタイミングでケガが悪化してしまいました。
だから、ケガが治れば自分は勝てるんだ、という強い思いがあったはず。常に「次の場所は必ず勝つ」と考えていたことでしょう。
辞めたら一生後悔する
「やってしまった後悔よりも、やらなかった後悔のほうが強い」
僕はこう考えて行動するようにしています。
また35年ですが、これまでの人生を振り返って、「ああ、やらかしたなあ」なんていう後悔は一切ありません。
そういう後悔は、時間が経てばなくなります。
しかし「やらなかった後悔」は今でも頭を支配しています。たとえば野球が大好きだったのに、中学に入って野球部に入らなかったことです。坊主がイヤだ、というだけで…
あのまま続けていれば、もしかして今頃メジャーリーグで打席に立っていたかもしれません。
「そんなこと、流石にありえない」って思いますか?自分で自分の限界を受け入れるって、けっこう大変なんですよ。
せめて、中学高校…と野球をやり続け、どこかで力の限界を「まざまざと」感じていたら、もうメジャーリーグなんて夢に見ることはないんでしょうけれど…
稀勢の里も、「今辞めたら後悔が残る」と感じ続けていたことと思います。それだけに、思ったとおりの相撲が取れないことは、とてもつらかったはず。
そんな苦しい戦いを経て、今自分の限界を静かに受け入れようとしている。
いずれにせよ、稀勢の里がすべて納得して引退という道を選んだことを願います。