From:桜井啓太
将来のため、今がんばろう。
塾講師として子どもの成長に関わっていると、このように声をかける大人がとても多いです。
- 勉強しないとロクな大人になれないよ。
- 努力をしないと成功できないよ。
- 今は我慢しなさい!
子育ての現場では、このようなことが教えられています。
これらは全て正しいです。世の中で成功した人は、まず間違いなく我慢とか努力を大切にしています。その「事実」を子どもたちに伝えようとする大人の姿勢は、絶対に正しいと思います。
では、どうして子どもは言うことを聞いてくれないのでしょうか?
こんなに実証しまくられの成功法則があるのに、どうして努力ができない人たちであふれているのでしょうか?
この答えを解き明かすため、マシュマロ・テストという実験を見てみましょう。
マシュマロ・テスト
4〜6歳児が1人、部屋にいます。
テーブルにはおいしそうなマシュマロが1つ。この場合、マシュマロは子どもの大好物ならなんでもかまいません。
実験スタッフは彼/彼女にこう伝えます。
「私が戻ってくるまでマシュマロを食べないでいられたら、戻ってきたときにもう1つあげるよ」
結果は様々です。我慢しきれずに食べてしまう子もいれば、ちゃんと待つことができて2つ目のマシュマロを手に入れる子もいます。
この実験のおもしろいのは、10年後この子たちの追跡調査をしたことです。その結果、「マシュマロを待てた」子たちは、そうでない子たちをほぼ全ての分野で上回っていました。
僕らはどうする?
この結果から、親・大人としての僕たちはどのように振る舞えばいいのでしょうか。
正直、これだけでは分かりません。どうやったら子どもたちを「我慢強く」できるのか、その方法が不明だからです。まさか、子どもたちのこの実験について教えて、「だからあなたも我慢するのよ!」と言うわけにもいきませんしね。
実は、この実験には続きがあります。
変わるべきは、もしかしたら
次の実験では、このマシュマロ・テストをやること自体は変わりありません。ただし、これより前にちょっとした工夫をしました。
おもちゃを与えて遊んでいる子どもたちに、「ちょっと待っていたら新しくて良いクレヨンを持ってくるよ」と伝えます。
ただし、あるグループの子どもたちにはクレヨンをちゃんと持っていってあげますが、別のグループには「手違いで実はクレヨンはなかった」ということにします。
つまり、大人に対して「信頼できる経験」と「信頼できない経験」をしたグループに、あらかじめ分けておくということです。
その結果…
「信頼できない体験」をした子どもたちは、平均3分2秒しかマシュマロを待てなかったのに対し、「信頼できる経験」をした子どもたちは平均12分2秒も待つことができたのです。
もしかしたら、大人の振る舞いで子どもたちの我慢強さを変えてしまっているのかもしれません。変わるべきは、大人の方なのかも。
言えば動く、は違う
塾講師として、数多くの親子を見てきました。多くの親御さんは、「口酸っぱく言う」ことで子どもたちをコントロールしているようにみえました。
ですが、それは本当に有効なのでしょうか?
理路整然と経験に基づいたことをいくら伝えても、事実では人は変えられないのです。
それよりはもっと間接的なこと、例えば大人としての自分自身の行動を変えることのほうが、よっぽど効果があるのかもしれませんね。
PS
今日紹介した実験については、この本の90〜94ページを読んでみてください。
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